No.026 海を渡ったジャポニズム〜その2

国内外から美術品として評価の高い日本刀は、ジャポニズム文化の筆頭です。刀剣の歴史を紐解くならば古事記により伝えられた太刀から始まります・・・。さらに、時代ごとに用いられる刀装具も様々、実に奥深い世界観を味わえる刀剣美術です。

江戸時代が最も華やかな刀剣美術を残したものと思われますが、桃山時代から明治に至るまで続いた金工が多々名前を連ねています。ここで日本刀を語り始めますと膨大な資料と関連する金工の家系をつらつら書き始めることになりますので〜焦点を刀装具へ戻します。さらに刀装具に用いられます金具に鍔(つば)の他に縁(ふち)・頭(かしら)・目貫(めぬき)・小柄(こづか)・笄(こうがい)・ハバキ・切羽(せっぱ)・口金(くちがね)・栗形・責などがあり、中でも彫金加飾を施したものには、鍔・縁・頭・目貫・小柄・笄などがあります。

その中の三所物(みところもの)と称された小柄・笄・目貫とも、二種類の金具は二所物(ふたところもの)と称して小柄・笄を刀装拵から分離し鑑賞する風習が広まります。それにより美術工芸的彫金技法の発達が進み、江戸時代美術のひとつの特色として取り上げられました。その流れから江戸中期以降はこれらの金工家が多く輩出され、それぞれの技を競った名品が数多く残されています。

そこで〜ようやく本題へと入らせていただきます。江戸金工を代表する奈良派の銘を記されたロンドン1881年ティーファニーのジャポ二ズム装飾を手掛けた工房で知られるRupertFavellのデザートカトラリーセットです。ハンドル装飾からナイフブレードのデザイン全体を小柄のように仕上げ、フォークのハンドルも小柄の持ち手を組み合されています。装剣金工界の中心的な存在で、小柄や縁頭の名品を多く作ったとされる奈良派。奈良の門から出た名人のうち利寿、乗意、安親を奈良三作と称賛される名高い名工です。奈良派は横谷派と並び彫金界の二大主流を形成し、奈良彫りと呼ばれる堅実&たがねの利いた工作で作品を多々残しました。江戸時代には合金材料も用いられ赤胴魚子に高彫色絵、草花や魚・鳥など小動物を画題にした作風が見られます。

奈良派は彫金界の最も重要な流派の一つですが、初代の利輝は塗物を生業とし、日光東照宮の造営などに塗師として参加、次の利宗の代には家業の塗物から手を引き、屏風&箪笥などの金具を作る飾師となります。さらに三代目の利治になり初めて、小柄などの製作に関わるようになったという、塗師から発展した経歴が作風にも現れ、当時は使われなかった鉄を多用したこと。題材も様々な題材に挑戦し新しい刀法と言われる片切彫や肉合彫等によって表現されています。

さらに徳川幕府のお抱え工として上流階級を主な顧客にした各派に対し、奈良の町彫り師の傾向とバイタリティをもって非常な人気を博した金工であったようです。その意表を突くセンスがイギリス人の目にも驚くべき衝撃を与え、目から鱗?それ以上のコラボレーションとなったデザートカトラリーセットです。

ちなみに当店の虎徹は江戸時代甲冑師として名高い長曽禰(古鉄)興里が、とある挑戦にて敗れ〜その後、東西に名を挙げた名刀師となったという名にあやかりたいが為に古鉄から名を変えた虎徹に由来いたします。まだまだ名士の足元にも〜おぼつかぬ〜です。

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